2015年 7月~12月

●7月●
北斗で起こった事件やイベントを“簡単”に紹介するRiccioのイベントレポート!
今回は2015.7.30の「紅の涙」 です。
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Trinsicの西の森は度々森林火災が起きていた。
火は既に消えていたが、未だに漂う焦げ臭い匂いが、焼かれてからまださほど時間が経ってないことを物語っている。
調査に訪れたTrinsic公安部のSakuya Tsukiyonoは、その焼けた森を見てため息をついた。
これは明らかに大型のモンスターの仕業だ。それもドラゴンやデーモンクラスの。
少し前にマラスでドラゴンが絡む事件が起こったが、こちらでも異変が起こり始めたということなのか?
最近はMinax軍にも新しい動きが見られる。Minaxの配下Shantyと「夕暮れの色をしたルビー」の争奪戦をしたのはついこの間のことだ。
それとは別に、General Frostの腹心Ralphも何かを探して動いているとAlanが伝えてきた。今回の事件は関係があるのだろうか。

破壊痕をざっと検分した後、木こりに聞き込み調査を始めた。
火災の規模の割に意外にも人的被害は小さいようだが、それでも何人かの木こりが命を落としたようだ。
森に点在する冒険者の家にも被害が出ていた。
 
Sakuyaは騎士団に所属しながら、ネクロマンサーでもある。
邪法使いとして忌み嫌われるネクロマンサーだが、死体を操るだけでなく、「死者の魂と対話する」という側面もある。
この能力で死者から情報を得られることも多く、事件の捜査では重宝されているのである。今回もそれが理由で担当を命じられていた。

彼女の場合は、かつてデーモンに蹂躙され崩壊した旧マジンシアの跡地で多くの犠牲者の魂と対話し、天に還した経験が基になっていた。
何が役に立つかわからないものだな、と彼女はひとりぐちる。
もっとも、今回はネクロマンサーの能力を使う必要はなさそうだった。
数人いたという死者の魂は既に天に昇ったのか姿が見えず、生きている人間相手の聞き込みだけで済みそうだ。
 
そうしてSakuyaが事件当時の話を聞いていくと、あるキーワードが繰り返し出てきた。
 
 「真紅の巨大なドラゴン」

森の中に一匹の巨大なドラゴンが突然現れ、火やブレスを放って暴れ飛び去って行ったのだという。
木こり達が語った外見の特徴は、Sakuyaが以前冒険者として戦った、あるドラゴンと似ていた。
過去の戦いの記憶を呼び起こされ、彼女は戦慄する。

 ”Crimson Dragon”

かつて「War of Shadows」と呼ばれた戦いで、Shadow LordやMinaxの軍勢と共にブリタニアを震撼させた真紅のドラゴン。
…だが、奴らはフェルッカのTrinsicでPlatinum Dragonとの戦いに勝利した後、どこかに飛び去ってそれきり姿を見せなかった。
まだブリタニアに潜伏していたのか。しかし、何故今頃こんな場所に…?
それに、とSakuyaは思う。
Crimson Dragonの仕業にしては、被害が軽すぎる。どういうことなんだ…?

「よう、そこの姉ちゃん。あんた、Trinsic騎士団の人かい?」

背後から声をかけられて振り返ると、目の保護用とおぼしき黒い眼鏡をかけた筋骨隆々の大男が立っていた。
「はい、私は騎士団公安部のSakuya Tsukiyono。事件の検分で村にお邪魔してます」
「俺は村の近くで木こりをやっている、Beldって者だ。実は大急ぎで騎士団に頼みたいことがあるんだが、そっちから来てくれて助かった」
Beldと名乗った男は体が不自由なようで、歩くのに苦労していた。
「騎士団に、頼みたいこと?」
「ああ。森がでかいドラゴンにやられたって話は、もう聞いたか?」
Beldは口元に笑みを浮かべた。苦味のある笑みだとSakuyaは思った。
「ええ、巨大な真紅のドラゴンが暴れまわったとか…」
「そのドラゴンが現れるようになってから、俺は体の調子が悪くなっちまってな…」
「そんなある日、ヒーラーが万能薬の話を聞いたんだ」
「だが俺は、体の調子が悪くてあまり動けないんだ」
「そこで俺はAquaという目の不自由な少女に薬を買ってきて貰う事にしたんだ」
「ところが…」
Beldは唇をかみ締め、拳を硬く握って震わせた。
「Aquaが帰ってこないのだ! 本当は今すぐにでもAquaを探しに行きたいのだが、体が思うように動かない」
「だからお願いだ、俺の変わりにAquaを探して欲しいんだ」
「最近は森にドラゴンも現れると言うじゃないか! まさかとは思うが…頼む!」
Sakuyaは男の言葉を素早く検討した。
「Aquaの身に何かあったのなら、俺はもう生きてはいけない、とにかく探して欲しい!」
どうやら、この男のAquaという少女に対する感情は本物のようだとSakuyaは思う
「…わかりました、すぐTrinsicに戻って上にかけあってみます」
「それは有難い」
「ただ、広域にわたって探すので、人員を集めるのに多少の時間が必要です」
「多少の時間ってどのぐらいだ?」
「早くて3~4日程度ですね」
「おい、長すぎるぜ!人の命がかかってるんだぞ!?」
「こちらも命がけになります。わかってください!」
BeldとSakuyaは刹那の間睨み合う。眼鏡越しに感じるBeldの鋭い眼光に、Sakuyaは何故か奇妙な既視感を覚えた。
だが程なくしてBeldが視線を外し、奇妙な既視感は消えた。
「…クソ、仕方ねえ!!待っててやるから急いでくれ!」
「…努力します」
「準備ができたら、またここに来てくれ。俺がAquaの行き先を教える」
「わかりました」
別れ際、SakuyaはBeldが声に出さずに何かを呟いたのを見た。無意識のうちにSakuyaは読唇術でその言葉を読み取る。
…急げよ、俺にはもう時間がないんだ…
どういうことだ、とSakuyaは思ったが、Recallの詠唱のために精神を集中し始めると、その思考もどこかに流されていった。

街へ戻ったSakuyaは、早速騎士団本部へ向かう。
「Crimson Dragon?それは確かなのか?」
Sakuyaの報告書に目を通して、騎士団長Reonは尋ねた。Crimson Dragonは「War of Shadows」において、都市攻略の最終段階で現れた魔獣である。
Reonもその猛威はよく知っていた。
「まだ確証はないのですが、目撃証言の外見的特徴がほぼ一致しますし、破壊痕も以前見たものによく似てました。
姿が近い別のドラゴン族の可能性もありますが、今回は対Crimson Dragon前提でプランを考えるべきだと判断しました」
応えるSakuyaは疲労の色が濃かった。大急ぎで今後の作戦プランを立て、書類を作成してきたのだ。
「ふむ、ではどうする?」
「…今回は、冒険者を募ろうと思います」
「ほう?騎士団では力不足かね?」
Reonはパラディンギルドの執務室の窓から外を見ながら言った。その表情はいつものように、クローズヘルムに隠されて窺うことはできない。
「ソーサリア全体規模での異変の兆候、Minax軍に潜入中のAlanから連絡があった例の話、そして今回の事件か。当分忙しくなりそうだな。
だが、我々に失敗は許されん。全責任は私が負う。頼んだぞ」
「了解しました」
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